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海外ニュース

【EU】

 実験動物をめぐる戦い、一時休戦

動物福祉に関する改正欧州動物実験指令のおかげで、研究に関する恐れていたような惨事は回避されたという生物医学科学者たち 

AVA-net 海外 ニュース  No.143 2010-7-8 翻訳:宮路正子


   実験擁護派と動物の権利活動家の間の10年以上に渡る論争の末、欧州連合(EU)の立法者は、研究における動物の使用を規制するための新しい法的枠組みにようやく合意した。

 EUの行政機関および立法機関である、欧州委員会、欧州議会、欧州理事会の代表は、4月7日に行った密室会議で、科学目的に使用される動物の保護に関する指令(動物実験指令:86/609/EEC)についての妥協にこぎつけた。 正式な改正には議会と理事会の批准を必要とするが、これ以上の議論なしに、7月までには批准される見込みだ。

 これまでの指令案は、霊長類に対する侵襲的実験を厳しく制限するなど、ヨーロッパの生物医学研究を著しく妨害するものと思われていた。(ネイチャー誌456、281-282;2008参照) しかし、指令改正最終案は、科学者の憂慮の大半を鎮めるものとなった。 例えば、霊長類を使用する基礎研究が認められ、動物に「中程度」の苦痛を引き起こす実験の直後に、以前の取り決めのように、使用した動物を殺処分する必要はなくなり、代わりに、他の実験に使用できることになった。 同時に、改正案は、動物福祉に関する配慮にも対処し、最小限のケージの大きさや他の規定について盛り込んでいる。

 ドイツ、ゲッティンゲンにある霊長類センター所長、ステファン・ツロイエは、指令案は政治的文書で妥協の産物だという。 「それでも、もっとひどいものになったかもしれず、この程度ならなんとか我慢できます」。

 ベルギー、ブリュッセルを拠点とする動物福祉ロビー団体、“動物のための欧州団体”のカースティ・リードも、この妥協案はなんとか我慢できると、ツロイエに同意しているが、いくつかの種類の研究を禁止する条項に多くの免除項目が設けられたことは今でも残念だと加えた。

 この法案は、実験動物を保護し、EU内の規定を統一するための1986年の指令を改正するために策定された。 政治的議論は1998年に始まり、2002年、欧州議会は、EUの動物実験の削減、置き換え、苦痛の軽減に取り組む決意を盛り込んだ案を作成するよう委員会に要請した。

 委員会作成案は、2008年11月にようやく公表され、学術研究者と製薬業界に衝撃を与えた。研究に非常に厳しい制限を課し、研究者にそれまで以上の官僚的手続きを要求することを提案していたのだ。例えば、“人間の生命に関わる、あるいはその状態を衰弱させるようなもの”に直接関与しなければ人間以外の霊長類の実験を禁止し、基礎研究、特に脳に関する研究ができないようにしていた。

 適用範囲も広く、鶏卵の科学的使用も禁じていたが、これはワクチン生産に欠かせないものだ。 そして、動物に軽度の苦痛を引き起こす実験の後に、使用した動物を殺処分しなければならないとしていたが、これは研究に使用される動物の数を劇的に増加させることになっただろう。

 委員会案は、適時に十分なロビー活動を行わなかった科学共同体への大きな警鐘だった、とロンドンを拠点とする研究ロビー団体“動物実験を理解する”の最高責任者サイモン・フェスティングはいう。委員会は、逆に、よく組織化された動物福祉や動物実験反対側の感情に揺さぶりかけるようなロビー活動に影響されたのだと主張する。

 しかし、2009年、研究団体は、議会が研究者側の観点により理解を示すよう説得するための行動を開始した。 2009年5月の議会の第一読会では、改正案の中で議論の的となった規制の大部分が取り除かれた。 (ネイチャー誌459、139;2009参照) 議会は新たな規定を加え、動物実験に関するデータの共有を義務付けたが、創薬会社は、このような情報の多くが独占的知的財産であることを鑑み、これに従うのは難しいことを指摘した。

 議論は2009年を通して続き、理事会で修正案が議論された。理事会は27のEU加盟国の代表から成り、その多くは修正案が研究者に対して寛容過ぎるという意見だった。欧州議会議員が去年6月に新たに選出された後、動物福祉のロビー活動は新議員をターゲットにして、より規制を厳しくする方向へ多くの議員を説得した、と指令報告担当者エリザベート・ジェグル議員の議会補佐ジュリアン・ビョッカーはいう。 「私たちが指令に研究者側の見解を維持するためにどれほど懸命に戦わなければならなかったか知っていただきたいと思います」

存続の危機にある実験

 結果は完全ではないが、少なくとも動物実験は継続できる、とドイツで最大の助成金交付機関DFGの役員はいう。指令で禁止された研究もある。大型類人猿を使用するもの、あるいは極度の苦痛や長引く苦痛を引き起こすものだ。 しかし、臨床的に緊急性のあるものであれば、研究者はブリュッセルに設置される特別委員会を通して禁止の免除を要請することができる。

 指令の最終改正案は、また、絶滅危惧種の実験使用を認めており、例えばメンフクロウは、聴力研究のために人間の飼養下で繁殖されている。実験申請と評価の手順は、以前の案よりも簡素化され、イギリス、ドイツ、フランスなど、すでにそのような規則が厳しい加盟国では研究者の官僚的負担は増加しないはずだ。また、動物実験に関するデータ共有の義務については除かれた。

 しかし、指令の曖昧な表現が、より明確に定義される国内法に翻訳される際に問題が起こるのではないかと案じる科学者もいる。国内法では、例えば、どのような種類の研究が“長引く重度の苦痛”を引き起こすと見なされるか明確にしなければならない。また、いくつかの研究の全面禁止は、2009年12月に採択されたリスポン条約に記されている、ヨーロッパの憲法による研究を行う義務と真っ向から対立すると主張する科学者もいる。

 ドイツ、ハイデルベルグ大学の生理学者ライナー・ノビリングは、人間以外の霊長類の使用が制限されることで、研究倫理のニュルンベルク規範に反して、人間での実験的治療の試験を奨励することになるかもしれないと憂慮している。

2010年4月13日 ネイチャー誌
http://www.nature.com/news/2010/100413/full/464964a.html

 

 

 

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