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 HOME > 情報公開 > 滋賀医科大学のサル類実験計画書を分析しました  
 

情報開示請求活動

滋賀医科大学の
サル類実験計画書を分析しました

AVA-net News No.105 2004.3-4 根津 瑞生


  情報公開請求に基づき入手した、滋賀医科大学の動物実験計画書の分析を試みてみました。最新の計画書は未入手ですが、対象としたのはサル類を利用する場合の書式で、「平成10年度〜平成13年度直近サルを用いた実験計画書(部分開示)」とされた363枚です。実験の医学的妥当性に関しては素人なので控えざるをえませんが、外部の一般人の立場からでも問題を指摘できる点が多く見られましたので、ご報告します。

◆記載されている内容

・動物実験委員会印、施設長印、助教授印、受付印
・書類タイトル:動物実験計画書(サル類)
・提出先 :滋賀医科大学動物実験委員会
・記入事項:受付月日、通しナンバー、講座・部局名、
     所属長名、研究責任者名、連絡先(電話)※注1、
     研究補助者名、実験題目、実験期間、
     実験内容の自己申告(6択)、実験目的及び内容、
     実験時の苦痛軽減または排除方法、
     実験終了時の安楽死日時、安楽死法、
     署名日、署名及び印影、承認もしくは却下の選択欄
     (承認されたものには、承認番号欄、却下されたものには理由欄がつく)

・署名されている文章:
     「今回の実験では、動物実験に代わる方法が見つからない為、
     動物実験の認可を頂きたく計画書を提出します。
     上記計画書に基づいて動物実験を実施するに当たり、
     『動物実験に関する指針』を遵守します。」
  ※注1:内線欄、緊急時欄、及び途中の年度からe-mail欄が追加。

◆統計

 総枚数:363枚(滋賀医科大学を取り上げた理由は、サル類の実験に関して全国で最も実験計画書の枚数が多かったためですが、計画書には使用頭数の記載欄がなく、同じ実験内容で複数枚の計画書が提出されているため、サル1頭につき1枚の実験計画書となっているのではないかと思われます。)

・年度別:1998年度(平成10年度)  69枚
  1999年度(平成11年度)      47枚
  2000年度(平成12年度)      63枚
  2001年度(平成13年度)     184枚
 (年度をまたがる計画書は、実験開始年度に含めてカウントしました。
  実際には、実験計画書は「1年ごとに更新の事」となっており、
  2年以上継続されていると思われる実験もありました。)

分野別:生殖・繁殖に関するもの    148枚
      脳・神経機能に関するもの   103枚
      その他             112枚

◆問題点1 非公開項目がある

 上記の記載内容のうち、印影欄すべてと、講座・部局名、所属長名、研究責任者名、連絡先すべて、研究補助者名、署名及び印影の項目が全面的に非公開でした(※注2)。また一部の計画書では、実験題目も非公開となっていました。

 氏名等の非公開の理由に関しては、情報公開法第5条第1号に基づき、「公にすることにより、個人が識別されると、研究の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとみなしたから」となっていますが、これら実験計画書に基づいた研究の結果は、氏名開示のもとに論文として発表される性格を持つものであり、研究者名を公表することにどれだけの問題があるのか、大変疑わしく感じます。

 また、実験題目を非公開とするのも、同じく第5条第6号によって「未発表の研究論文や研究計画等の知的創作物に関する情報を含み、開示した場合に特定の者に不当な利益や不利益を及ぼすおそれがあるとみなしたから」となっていますが、国民の税金を使用し、研究する国公立大学においては、情報公開や説明責任の方こそ優先されるべきではないでしょうか。

 ただ、実際のところは、実験題目が非公開の計画書も、実験を説明する文章は全文公開されており、内容が不明なわけではないのですが、あえて研究タイトルが非公開とされているために、説明文に何か不足があるのではないかなどの疑念もわきました。

※注2 塗りつぶし忘れと思われますが、実際には1枚のみ、氏名が公開されていました。

◆問題点2 動物の受ける苦痛の程度が評価されていない

  実験内容の自己申告の選択枝として、

 1.深麻酔下(又はそれに代わる手段)にて安楽死させた後標本摘出
 2.麻酔下で急性実験を行った後安楽死
 3.麻酔下で手術後、一定期間飼育後安楽死
 4.痛みに関する実験
  (動物に苦痛を与えないための方策も記入)
 5.化学物質(薬物、発ガン物質、その他)の長期投与
 6.その他

 以上の6項目が挙げられており、苦痛のおおよその評価も意図として含まれていると思われますが、他大学で試みられているような、程度を評価するスケール(たとえば大阪大学の5段階の苦痛の評価)が採用されておらず、動物福祉的観点から実験を評価するには明確さを欠いていると思われます。

◆問題点3 承認なしに実験が始まっていると思われるケースなど

 実験開始日より実験計画書の受付日が後であるケースが95枚ありました。記載通りに実験がスタートしているとすれば、実験計画書の提出及び承認の方が事後だったことになり、動物実験委員会そのものが機能していなかった可能性を大きく示唆しています。また、実験開始日と受付日が同日であるものも15枚あり、承認までに時間を要さなかったのか?と考えると、同様に実験計画書や動物実験委員会の機能として疑わしいものを感じます。
 ちなみに、署名日よりも受付日が前という、書類として疑問の残る計画書も10枚ありました

◆問題点4 すべての計画書が承認されている

 承認・却下を記載する欄に関しては、どちらかに印をつける形式となっていますが、実際にはすべての計画書が承認されていました。したがって、却下欄には理由を記入するコメント欄がありますが、委員会委員による批評・改善事項などの記載があるものは1枚もありません。3とあわせて考えてみても、委員会による承認自体が形骸化している実態があったのではないかと想像されます。却下となったものが差し戻されたのちに廃棄されていっている可能性もありますが、却下の理由や履歴が把握できない問題点はあり、また、承認であれば実験委員会からのコメントは必要とない形式になっているため、全体的に委員の意見が見えない計画書となっていました

◆問題点5 安楽死法等に関して外部からの評価ができない
◆問題点6 使用するサルの種類が不明

 安楽死法の欄に、麻酔薬の大量投与に印をつけながら、薬剤の名称もしくは分量の記載がないというものが31枚、苦痛の軽減欄に同じく記載のないものが2枚ありました。これらの記載がなければ、実験動物の苦痛の軽減に関して事前評価を行う計画書の意義が生かされていないことになります。本来ならば、却下として一度つき返されるべきではないでしょうか。

 また、安楽死法としてペントバルビタールの大量投与を行う場合に、同一内容の実験に関して「40mg/kg iv」とされるものと「20mg/kg iv」されるものとがあり、枚数からも「20mg/kg iv」が記載ミスではないかとも想像されました。しかし、使用される薬剤や容量について妥当性を検討しようにも、実はこれらの実験計画書にはサルの種別を記入する欄がなく、どの種類のサルを利用するかが不明なため、専門家であってもその妥当性を判断することは不可能です。「実験時の苦痛軽減または排除方法」に関しても同様なことが言え、実験計画書が内部でどのように分類・管理をされているのか不明ですが、外部からの判断が入れられないという意味では、大変不明瞭な書式になっていると言えます。

 ちなみに、実験説明文中に、ニホンザル、カニクイザル、マーモセットなどの名前が出てきましたが、特に種名が明記されていない実験が大多数でした。

◆問題点7 使用するサルの入手先・由来、飼育場所、
        実験実施場所が不明

 これらの点は、他大学の実験計画書と比較した場合に欠けている項目です。飼育場所、実験実施場所に関しては、決まった場所に限定されているため記載が求められていないのかもしれませんが、サルの入手先・由来に関しては、記載を求められていない点に問題を感じます。野生ザルが違法に実験利用されてきた問題が明るみになっている大学であることを考えれば、なおさらではないでしょうか。

◆問題点8 医学用語に関する誤字

 「実験目的及び内容」の欄内で、記入されている医学用語に誤字がありました。

  (誤)           (正)

節遮<段>術    → 節遮断術

脈<間>作動物質 → 脈管作動物質

 単純な入力ミスであってほしいと考えますが、実験の中核部分の記載で誤字が続き、それが何度も提出されているために、実験計画書への注意度、関心度の低さを感じさせます。またこれでは、果たして本当に研究者本人が記入しているものなのか、などの疑念もわいてしまいます。

◆問題点9 その他、全体像など


 安楽死日とされる日と、実験開始日が同一となっており、そのことが実験内容と矛盾するように思われる計画書もありました。1頭につき計画書1枚であるのも管理上の利点はあるのでしょうが、逆に、一つの実験でどの種類のサルを、何頭、どういうスケジュールで使うのかが見えづらく、全体像が不明になる欠点もあるように思います。九州大学のように、使用頭数の算出根拠や、その種でなければいけない理由を書かせる大学もありますが、そういった根拠を評価する姿勢が見えず、特に1実験で1年間に50頭以上使っていると思われる実験には疑問を感じました。

 以上、医学に関しては素人ですので、チェックしきれていない点、誤解している点などもあるかもしれませんが、「きちんと実験委員会で評価されている」と主張される実験計画書にも不備が多いということが実際におわかりいただけたかと思います。

その後
滋賀医科大学では、サルの実験に関して、全国的にも珍しい資格制度を導入しています。一般市民が情報開示をもとめる活動が、その創設に大きく影響したことは間違いありません。

 

 

 

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