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 HOME >最高裁の判例にも採用された「ノラ猫詐欺事件」
 
 

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【連載コラム】動物実験見聞記(15) AVA-net News No.145

橋爪 竹一郎(宝塚造形芸術大学教授・元朝日新聞論説委員)


最高裁の判例にも採用された「ノラ猫詐欺事件」

 犬猫を自治体にもっていけば「安楽死」させてくれるという、とんでもない間違ったイメージ。
 もらってください、と広告すれば、申し込んでくる人の大半はじつは犬猫の売買業者。
 こうして引き取られた犬猫の多くが、動物実験室へ直行していく。
 ?野上ふさ子さんはこう強調し、「もらい手・里親さがしをー犬や猫をどうしても飼えなくなった場合は自分の手で新しい飼い主を探す。新聞広告などでもらい手を探すときは皮革業者や実験業者が求めてくる場合があるので身元を確認してください。」と書いている。
 そういえば、私の住む関西でもネットやローカル紙で「犬猫の里親募集」をよくみかける。捨てられた犬や猫、あるいは生まれながらのノラ、また、その赤ちゃんたちを救おうとするボランティアのみなさんの活動だ。

 この募集に応じてノラ猫を数十匹引き取った心やさしいはずの若い女性里親がじつはとんだ食わせ者だったという事件が2年前大阪で起きた。女性もしたたかで、地裁、高裁と争い、最高裁にまで持ち込んだが、却下されて「有罪」が確定した。私は裁判を二度傍聴し、里親本人と立ち話もした。判決文は最高裁のHPに採用されているほか、専門誌「判例タイムズ」にも紹介されている。〈ノラ猫の詐欺事件〉が最高裁まで持ち込まれるのも、その判決文がHPに採用されるのも前例がないという。ボランティアのみなさんから聞いたデータと合わせてあらましを報告しよう。

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 猫を譲って―メールを送りつける「ナゾの20代女性」
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 平成16年の秋ごろ、ボランティアの人たちの間で1人の20代女性の名が広がった。「猫を譲ってください。終生の家族として大事にします」とあちこちにメールを出しているという。女性は大阪府下のワンルームマンションに住み、在宅で株の投資をしているという触れ込み。いったん猫をもらうと、「寝る間もないくらい忙しい」と元の飼い主に会うのを拒み、猫もみせてくれない。返してほしいといっても応じない。
 ボランティアの人たちが、おたがいに女性とやりとりしたメールを見せ合い、電話の記録などを照合すると、いろいろおかしなことがわかってきた。

 たとえば、メールの文章はつぎの3種類がほぼ定型となっている。
「(ネットの写真で見た)あなたの猫は私がこどものころ寝食をともにしてかわいがった猫によく似ているので、思わずメールさせてもらった。」
「幼少のころから、実家で7匹ぐらいの猫を飼っていた」
「終生の家族として猫ちゃん迎えさせていただければ大変嬉しく存じます」
 そして、3匹の猫を受け取った日にも、同じようなメールを別のボランティアの人たちに送り続けていた。「親子猫3匹でも一緒にいただきます」「きょうだい2匹をペアで歓迎します」などという文章を添えていた。
 少なくとも2ヶ月半の間に9人から計17匹の猫を入手していることを確認した。そのほか、ボランティアの人たちが彼女のマンションを訪ねた時に目撃した猫が10匹。むろん、それ以前に入手した猫も数多いはずだ。
 (ちなみに、彼女自身の証言をもとに裁判所がのちに正式に推定したのだけでも約40匹にのぼる。)
 直感的に変だと思って猫を渡さなかったボランティアも7人いることがわかった。

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 消えた40匹以上の猫??大阪地裁へ「猫大量詐欺事件」を提訴
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 どうしてそんなに猫が必要なのか?
 これだけの猫をどうしたのか?
 終生の家族にするにしては異常に多いのでないか?
 これだけの大家族がワンルームマンションにはいりきれないのでないか?

 ふくれあがった疑惑をぶつけ、「自分たちの猫に会わせてほしい、それがだめなら返還してほしい」、とボランティアの人たちは、メールで、手紙で、電話で、直接訪ねて、かけあったが、彼女はいっさい応じなかった。手紙の受け取りは拒否し、行き先を告げずに引っ越してしまったりした。
 ボランティア側は、あくる年の平成17年8月、大阪地裁に「猫大量詐欺事件」として提訴した。
 法廷では、ボランティア側が譲渡した猫の写真や特徴の一覧を提出し、これらの猫が現在飼われている場所、飼育している人、などを明らかにするように訴えた。
 裁判所は女性に対し譲り受けた猫たちの現在の写真を出すように命じた。
 女性は「完全に室内で飼っているわけでないので、時間がかかる」と答えた。
 1年後、大阪地裁はボランティア側の主張をほぼ認め、女性の詐欺罪が成立。72万円の損害賠償の支払いを命じた。ただし、ボランティア側が要求する「猫の返還」については「猫を特定できない」と却下した。ボランティアの人たちは判決を評価しながらも、この点に異議を唱え、控訴した。女性側もまた判決を不服として控訴した。
 こうして前代未聞の猫の詐欺事件は、第2ラウンドの大阪高裁で争われることになった。

 大阪高裁での「猫の大量詐欺事件」の最大の焦点は女性がもらい受けた猫たちの行方だった。原告になった8人の14匹は? 
 さらに目撃されたのも合わせて約40匹とみられる猫たちはどこへ消えたのか?
 はじめ、女性は14匹の猫について、「2匹は死んだ。残りの12匹は野外で放し飼いにし、ベランダや玄関で餌を与えている」、と説明した。
「それなら餌を与えるところを見せてほしい」、とボランティア側は要求したが、「いろいろ嫌がらせの脅迫電話がきている、ネットにも流れたので迷惑している。原告らに私も会いたくない、猫もあわせたくない」と女性は突っぱねていた。
 ところがその後、女性は「じつは自分は高知県内に引っ越している、もらった猫たちも高知県内で飼っている」、と前言をひるがえした。
 裁判所のすすめで原告・女性(被告)の双方が現地で落ちあい、猫たちの飼育状況を確かめることになった。原告側は代理人を含め10人がビデオやカメラ、ケージなどを持参し、女性の指示した高知県内の場所へ出向いた。しかし、女性は体調不良を理由に姿をみせず、猫も見当たらず。
 控訴審判決は1審判決より被告に厳しい結果となった。
 被告側の損害賠償は1審判決の72万円から138万円に増額された。
(ちなみに、損害賠償に計上される猫の値段は1審判決では一匹5万円、2匹以上渡した場合は10万円と算定されていたが、2審判決は一律15万円に増えた。)

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1審、2審ともにボランティア側の主張が通る。発見された業務用大型檻
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 原告側は損害賠償の増額もむろん評価したが、それ以上に大きかったのは、一審判決では認められなかった「猫の返還」だ。原告側はそれぞれの猫について顔や体型、尻尾の形状など特徴を一覧した「ねこ目録」を写真つきで提出していたが、裁判所はこれに従って猫を返すように女性に命じたのだった。
 女性側はこれを不服として最高裁に上告した。一方で、原告側の猫の引き渡しの強制執行が高知地裁執行官によって行われた。猫を飼っているとされる高知県内の女性の実家を法の力で強制的に捜索し、猫を保護するのである。
 原告をはじめ、猫の扱いに慣れた支援者ら7人が応援にかけつけた。実家にはやはり女性は不在で、親族2人がいたが、詳しい事情は知らないといった。
 庭の段ボール箱に3匹の猫がいたが、まだ幼かったり、特徴などからみて、あきらかに原告の譲渡した猫ではない。
 そして、納屋から大型の業務用の檻がみつかった。のちにほかでも同じような業務用の檻が2つ、合計3つ発見された。いずれも大型の檻で、一般の家庭で使うようなものでない。明らかに女性の犯罪を暗示している、女性の背後に何かが隠されているのでは、と原告側は主張した。
 平成20年2月、最高裁は女性の上告をはねつけ、民事では原告の全面勝訴となった。しかし、刑事事件としては大阪地検が不起訴としたため、女性の刑事責任は問われず、もはや事件の核心に迫ることはできなくなった。行方不明の猫はいまもみつからないままで幕を閉じる。それが唯一、原告側を悔しがらせた。
 なぜ、不起訴になったのか。たとえば、業務用の檻の存在をどうみるかで、検察側と原告側では見解が真っ二つに分かれた。
 原告側の見方はー女性が猫をペット、あるいは家族の一員として飼うのなら、こんな大型の檻がなぜ三つも必要なのか。「これらの檻は業者の保管・移動のためのツールであり、女性ははじめから家族の一員として飼う意思はなかった証拠」と主張した。
 これに対し、検察側は「檻がある以上、被告は飼う意思があったとみなければならない」と逆の見方をした。

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 民事は最高裁も勝訴、異例のノラ猫・捨て猫詐欺事件
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 ともあれ、ノラ猫・捨て猫をテーマに、法廷で人々が真剣にこれだけの議論を交わし、民事では最高裁の最終判断で原告が勝訴したのは画期的な出来事だ。
 原告、支援者の人たちの動物への愛情(それはむろん、人間にも共通するものだ)と、それを支えてほとんど無報酬で献身的に努力した二人の弁護士に私は「ありがとう・ありがとう・よくがんばってくださいました」、と頭を下げまくりたい。この人たちがいないと、神様がつくった猫たちなのに、何者かによって痕跡をかき消され、この世を闇から闇へ通過するだけの存在だったろう。
 猫たちは犠牲になり姿は消えてしまったが、この裁判を通じて、人間の不法と、得体のしれない心の闇を照らし出したのだった。
 裁判の後、ネットには心やさしい人たちの喜びのコメントがあふれた。そのひとつに次のような言葉があった。
 『この種のできごとは、これまでだとーー「相手はたかがノラ猫じゃないか」「もらってくれた人にとやかくいう方がおかしい」「裁判所はどうせ捨て猫のことなどわかってくれない」「弁護士だって、ノラ猫のことなどまともに取り上げないだろう」といわれるのでないか、と思っていた。でも、これからはそうでないのだ!!』

最後に女性被告との立ち話のことを。

裁判の休憩のとき、女性は被告席から立ち上がって傍聴席に向かって「みなさん、私のことも聞いて下さい」と叫んだ。傍聴席は30人ほど、ほとんど動物保護のボランティアの人たちばかりだ。被告のものおじしない態度に意表をつかれた感じだ。誰も応じようとしない。私はもじもじしていたが、思い切ってそばに行った。「あなた、ほんとうに猫を飼っているの?」「飼っていますよ。でも、逃げていったのもある。しかたないやろ」「飼っている猫だけでもみんなに見せたら?」「猫はすぐに大きくなり、見分けがつかないんや」。

大阪市内の高級賃貸マンションで一人暮らし。きちんとした衣服、整った顔立ち。このときはまだ大型檻は発見されていなかった。この女性がほんとうに40匹以上の猫を取引したのだろうか。ちょっと信じられない気持に傾いていった。女性は「みんな私を陥れようとしているのや。私も動物愛護しているのに」といって法廷の外に出て行った。

その後、大型檻が三つも出てきて、やはりボランティアの人たちの言い分が正しかったと百%信じている。しかし、消えた猫たちの行方はベールに包まれたままだ。私にはどこかであの品のよさそうな女性がまさか、それに猫の商売って、そんなに儲かるものなのだろうか。なにか謎めいた釈然としないものが残っているのも事実だ。

 

 

 

 

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