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こんな動物実験が必要ですか?

【連載コラム】本田真知子の動物実験あれこれ     AVA-net News No.126


再生医療と改造される実験動物

−大いなる無駄?


1.全身が万能細胞でできたマウス?

 
 全身、様々な細胞に分化する能力が持っているマウスって何?

 2007年6月7日の朝日新聞にあった「様々な臓器に分化 『ES』並み人工幹細胞 京大再生研がマウスで成功」という記事を読んで、頭の中は「?」マークでいっぱいになると共に、なにやら生物の教科書にある、細胞の顕微鏡写真のような皮膚をしたマウスを思い浮かべた。

 普通の感覚では、まったく想像のらち外だ。

 様々な臓器に分化する細胞が胚性幹細胞(ES細胞)といわれて、再生医療の将来を占うものとして注目を浴びている。

 この胚性幹細胞は卵子を実験に使う。人間の再生医療のためには、人間の卵子を使った実験ははずせない。しかし、女性の体から取り出した卵子を、ES細胞をつくるために手を加え、改変、壊していくということには、抵抗感が強いし、反対も多い。この時に実験に使用されるのは、「余剰卵」と呼ばれるものだ。

 不妊に悩む女性たちが生殖補助技術を利用するために、排卵誘発剤を使って得た複数の卵子。子供を得たり、生殖補助技術の利用をやめた人たちのうち、提供に同意した人の「余った卵子」を実験に利用するという。

 今回報道にあった「人工幹細胞」は、卵子からつくったものではなく、「胎児の皮膚の下にある細胞」を利用としたという。

 人工幹細胞は原材料(?)が人の卵子よりも入手しやすく抵抗感が少ない。しかし、ES細胞に比べて、臓器に分化する能力が不十分で不安定だと指摘されていた。

 この記事にあるとおりES細胞と同じ能力を持つのなら、「人工幹細胞」利用の研究実験は大きく進むかもしれない。
 ただし、入手しやすく抵抗感が少ないとは言っても、原材料は胎児である。どこから手に入れるのか?

 嫌な気持ちになった。

2.「NO」とはいえないが、納得はできない

 記事では「全身がこの細胞でできたマウスも誕生した」という、なにやら前向きな報告の後、「ただ、生まれたマウスを1年近く観察したところ、2割で遺伝子組み換えの際に使うウイルスや遺伝子が原因と思われる甲状腺腫瘍ができていた」と続けられていた。

 以前、人間の耳が背中から生えたマウスの写真が衝撃的にメディアに流れた。

 再生医療の前進と喜ぶ人と、なにやらとんでもないことが起こるのではないかと不安感を募らせた人、両方がいると思う。

 様々な臓器に分化する能力をもつES細胞や人工幹細胞などの樹立と、臓器の分化の実験はパーキンソン病、脊髄損傷、心不全などの患者にとっては福音だろう。

 私自身も患者たちの切実な声を聞くと「NO」と簡単にはいえない。しかし、再生医療の実験のために様々に改造されるマウスをはじめとする実験動物、そしてその動物たちが腫瘍などにおかされていることを知ると、納得できないものを感じる。

 実験に用いられる動物たちに対する思いと、10年以上もES細胞や幹細胞の研究を重ねているわりには、これといった成果がなかなか得られないことに対する思いと、二重の意味で納得できないのだ。

 遺伝子治療、ES細胞の研究など実験室では人間と動物の卵子や胎児を使い、様々な動物を改造しても、最初に宣伝されるようなはかばかしい成果は私たちの目の前に現れない。

 もしかして、たくさんの命を費やし、大いなる無駄重ねているだけではないのだろうか?

  

■資料

遺伝子組み換えマウスの数:

 

 

 

 

 

 

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