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 HOME > 代替法 > 人道的代替法によるより良い科学教育(2)  
 

動物実験に代わる方法を考える

人道的代替法によるより良い科学教育(2)

Dr.J.Balcombe
The Humane Society of the United States

2001年1月17日 第14回日本動物実験代替法学会でのバルコム博士の講演
市民公開フォーラム「初等・中等教育における動物実験とその代替法」

(同学会の許可を得て翻訳したものを「AVA-net News」 No.85に掲載)
翻訳:宮路正子


(1 の続き)

●新しい代替法の開発

 上記のような既製の代替法に加えて、教師は自分で独自の代替法を開発することもできます。他の選択として、野生の動物や植物を観察するという方法もあります。動物を教室に持ち込む代りに、生徒を動物の本来の住まいである外の自然の中に連れて行くのです。さらに別の選択もあります。生徒に自分達について観察させるのです。教室には生徒がいるものですし、彼らの身体もまた有機生物として機能しているのですから。生徒に自分達の身体や生理機能について勉強させるための簡単な実験として、反応時間を調べることができます。

 生徒を一列に並ばせ、前から順にうしろの生徒の肩の上に左手を置いていき、所用時間を計るのです。一番前の生徒がうしろの生徒の肩の上に左手を置き、うしろの生徒は自分の肩の上に前の生徒の左手が置かれたことを感じたら、今度は自分のうしろの生徒の肩の上に左手を置く。そして、これを列の一番うしろの生徒に行き着くまで行ないます。これを何度か繰り返し行なってみると、もちろん、所用時間がだんだん短くなっていくのに気がつくでしょう。生徒がこの実験に慣れてくるからです。これを応用して、うしろの生徒の肩の上に置く手を一番目の生徒が左手で二番目の生徒は右手、そして三番目の生徒はまた左手、と交互にしてみることもできます。このような実験を行なうと、生徒は自分の身体を使って、脳が情報をどのように処理するのかについて少し知識を得ることができるのです。

 上の例は、生徒が生物学的現象について学ぶことができる、簡単で他の生物を傷つけない数多い例の中のたったひとつです。他にもたくさんのやり方があります。また、このような実験は、ひとりひとりの生徒の個性を認識する役にも立つのです。

●コンピュータの活用

 コンピューターを使用した代替法へのよくある批判は、完璧に作られているので、誰がどう使っても差が出ない、ということです。けれど、個性を認識するためにカエルやネコなどの動物を切り刻む必要はありません。個性を認識したいのであれば、教室にいるひとりひとりの生徒を見れば十分だし、あるいは、校庭に出てそこで見られる動物の行動、様々な植物を比べてみればいいのです。

 生徒が自分達を観察するという方法は、生徒が観察する側であり、される側でもあるという、とてもいい勉強法です。私自身、このような実験の指導を行なったことがありますが、生徒はとても楽しんでいました。ここに生物の先生がいらしたら、是非こういったことを授業で行なってみて下さい。

 従来の動物消費型の学習方法と比べてコンピューターを使用する方法にはいくつかのメリットがあります。今、お話しているのは死体解剖についてですが、ここで、死体解剖と生体解剖についての説明に補足を加えたいと思います。アメリカの学校では、授業で生体解剖が行われることはまれです。それどころか、15ほどの州では、死体解剖選択法の一部で、あるいは個別の州法により、これを禁じています。ヨーロッパでも、あまり頻繁には行われていないと思います。どうも、日本の学校でのほうが一般的なようですね。アメリカなどでは、生体解剖を行なうのは、ほとんどの場合、大学に入ってからです。大学レベルになると侵襲的動物実験が行われるのも珍しくありませんが、これも今では減少傾向にあります。

●何度でも練習できる

 さて、話をコンピューター代替法にもどしましょう。コンピューターを使用するメリットのひとつは、解剖の過程を好きなだけ何回でも繰り返しできることです。動物の死体は一度解剖してしまったら、それでおしまいです。もとにもどしてもう一度初めから、というわけにはいきません。いろいろな部分の標本を組み合わせてみるということはできるかもしれませんが、実際に解剖していくのとは違います。コンピューターでならば何度でも解剖の過程を繰り返せるのです。

 また、コンピューターを使うと、自分のペースで解剖を行なうことができます。それにもちろん、場所を選びません。動物の死体解剖は、教室で行い、授業が終わる前に終了しなければなりませんが、例えばCD-ROMならば自宅に持ち帰り、自分のコンピューターで解剖実習を行うことができますし、好きなだけ何度でも、自分のペースで進められるのです。それぞれの生徒にはそれぞれの学習方法と速度があります。言い換えれば、人間には個人差があるのです。

 コンピューターを使うと、動物を解剖するだけでなく、プログラムを逆に作動させて、解剖していったものをもとにもどす作業もできます。そして、いろいろな部分からひとつの動物を作り上げていくというこの作業が、実は動物について学ぶのに非常に役に立つのです。 

 そして、多くのプログラムには自己評価テストが含まれていますので、どれだけきちんと学習できているかチェックすることができます。腎臓の機能をきちんと理解できているかどうか自分では評価できません。ですから、コンピューターに問題を出してもらってチェックするのです。このテストは、先生がいてもいなくても、生徒が自分ひとりで行なうことが出来ます。

 教育の場でコンピューターを使うもうひとつの利点は、生徒がコンピューター技術を実地で学び、慣れることができるということです。ここにいらっしゃる方で職場でコンピューターを使われる方は手を挙げてみて下さい。では、職場で死体解剖を行なう方はいらっしゃるでしょうか。最初の質問にはほぼ全員が手を挙げられましたが、2番目の質問は数人だけでしたね。このシンポジウムは科学関連のものですが、一般の集会などでは2番目の質問に手を挙げるのは、せいぜいひとりか2人です。何が言いたいのかというと、今日私達が利用している科学技術に子供たちが慣れる方法としてコンピューターを使うのは非常に有効だということです。私達はコンピューターを使えなければならないのです。一方、ほとんどの人は仕事でメスや解剖用のカエルの死体に触れることはありません。

●科学的にも高い評価

 コンピューター代替法の実際的なメリットについて述べてきましたが、では科学的に信憑性はあるのでしょうか。これらのメリットには根拠があり、実際に生徒の知識を向上させるということを科学的に証明するデータはあるのでしょうか。実際にそういうデータはあります。

 ここに私が集めたデータがあります。これらは正式に発表された研究や論文で、伝統的な動物消費型方法で学習した生徒と代替法で学習して生徒の習得レベルを比較したものです。ここでは、時間の関係で29あるうちの3つを紹介したいと思います。

 まず、1995年にイギリスのThe Journal of Biological Educationに発表された研究によると、大学で生物学を専攻した学生のうち、ラットの模型を使って学習した308名の学生とラットの死体解剖を行なった2605名の学生との間には知識面で何ら差が見られなかったということです。 

 この結果は、研究対象の学生の数も非常に多く、代替法使用と死体解剖実験の結果がまったく同じだったということで、とても説得力のあるものだと思います。この研究では、また、教師が生徒に対して、ラットの死体解剖を行ないたくなければ代替法を選択することもできる、とあらかじめ知らせる、つまりオープンな方法を取ることが学校にとってもメリットがあるとも述べています。最初から選択肢がある、そしてそれを生徒に知らせる新しいシステムをあらかじめ採用しておいたほうが、従来のように、生徒が教師のところにやってきて自分の教育のためにラットを傷つけたくないので、他の方法はありませんか、といってから代替法について検討するよりはずっと簡単です。

 2番目の研究は1968年に発表されたものです。まだ、学校ではコンピューターなど、ほとんど、あるいはまったく使われていなかった頃です。Science Educationという雑誌に発表されたもので、ミミズ、ザリガニ、カエル、パーチ(スズキ類のサカナ)などの動物の死体解剖をフィルムで見た高校生のこれらの動物に関する知識は、実際に死体解剖を行なった生徒の知識より勝っていた、ということです。

 そして3番目は1993年にJournal of Research in Science Teachingに発表されたもので、インターアクティブ・ビデオディスクを使用した学習は、高校生がカエルの解剖学的構造やその解剖過程を学ぶうえで、実際にカエルの死体解剖を行なうのと少なくとも同じ程度効果があるとしています。

 ひとつの研究だけ取り上げてみても、代替法が有効であるという強力な証拠にはなりませんが、これまでに発表されたすべての研究をひとまとめにして科学的な証拠として見てみれば、生物学を教える、あるいは学ぶために動物を傷つける必要はないということを証明するための強力な裏付けになります。

 余談ですが、代替法は動物の命だけでなく、人間の命を救う役にも立ちます。実は、私はまもなく転職しますが、転職先の会社は医学関係者向けの、鏡視下手術、カテーテル法、注射といったminimum invasive surgery(侵襲を最小限に押えた手術)トレーニング用シミュレーターを作っています。臨床現場で調査してみたところ、これらのバーチャルリアリティによるシミュレーターを使ってトレーニングをしたあとのほうが医師や医学生は手際良く治療ができることがわかっています。

 トレーニングは、たとえば、コンピューターのスクリーンに映っている人体のデジタル映像を見ながら、実際に器具に接続されている内視鏡を使って行います。これはバーチャルリアリティ環境と呼ばれています。アメリカでは毎年医療ミスで4万ほどの人が死亡しているといわれていますから、このような器具はその数を減らす役に立ちます。

●HSUSのプロジェクト

 もう、すでにお話しましたが、HSUSは動物との関わりが重要だと思っています。私達には動物との関わりが必要です。しかし、関わる際、動物を傷つける必要はありません。動物と関わりを持つことで、人は他者への共感、敬意、関心、思いやりというものを育むことが出来、これは、もちろんとても大切なことです。教育の場からただ動物を取り除いてしまうというのは生命科学教育のためにいいことではありません。ですから、コンピューターやビデオテープなどを使用した代替法がいいというのは、それらが動物に取って代わるものとして、という意味ではなく、実際に動物と関わるということと合わせて、という意味ですが、動物との関わりはあくまでも動物に無害な環境においてでなければなりません。

 HSUSではこの概念に沿って2つのプロジェクトを行なっています。

 ひとつは科学祭用の人道的科学祭プロジェクトのリスト作りです。アメリカには科学祭というものがあります。生徒が科学研究を発表し、競い合って賞などをもらうものです。HSUSでは科学祭のためにいろいろなプロジェクトを用意しています。というのも、科学祭が近づくと、生徒に研究用として提案するアイディアが不足して教師が困ったりするからです。そこでHSUSは動物を傷つけないような研究、たとえば自宅の犬や猫、あるいは餌場に来た野鳥を観察したり、夏場に家の中にいる昆虫の種類についてまとめている、といったような研究を提案します。このような研究の種類は限りなくあります。HSUSがこのプロジェクトを始めた理由のひとつは、科学祭用に行なう研究の中に動物を傷つける種類のものが多いためです。HSUSはそれほど年端のいかない生徒がそういう研究を行なうのは問題だと思っています。

 もうひとつのプロジェクトはHSUSが開発した「動物に優しい実験室」で、これは高校生用に動物を傷つけない方法で生理学や解剖学を学ぶための様々な実験方法を提案しているマニュアルです。この中には生徒による自己観察も含めて実にたくさんの方法が含まれています。

 最後になりましたが、話を終える前にHSUSが出したばかりの動物実験の論議に関する科学と良心について書かれたブックレットについて触れたいと思います。このような出版物は教室での倫理的議論を促進する助#・になるのでとても重要だと私達は考えています。教室での生体解剖や死体解剖は、それを行なうことが正しいのか正しくないのか、倫理的なのかそうでないのか、といった議論がまったく行われずに進められてしまうことがあまりにも多いのです。たとえ生体解剖、死体解剖が行われるにしても、最低限、そのことについて話し合いがなされるべきです。そして、教師はそういった話し合いを生徒がそれぞれの気持ちについて発言することが出来る場として与えるべきでしょう。

 このブックレットはもちろん中立的ではありません。HSUSは科学のために動物が傷つけられることに反対の立場にいるのですから。しかし、このブックレットは、こう考えなければいけないとか、こうすべきである、とHSUSの見地を人々に押し付けているわけではなく、いろいろな観点から話し合いができるよう批評的な考え方をするよう促し、それぞれの考え方、懸念、感じ方などについて話すことができるようにと発行されたのです。

●代替法の理念

 さて、生命を奪う、あるいは破壊することなく生命科学を学ぶ方法は数多くあるということを今日の話から分かっていただけたでしょうか。もうひとつ大切なことは、教育の場には動物の存在が必要だということです。ですが、動物を傷つける必要はありません。教育の場で動物を傷つけることがどうしていけないのかというと、人道的な理由以外に、他の生命を尊重しなくていいというメッセージを子供たちに与えてしまうからです。教育の場で動物を傷つけることで、命あるものを切り刻み、使い捨てにし、ある生物からその貴重な所有物である命を奪っていいのだと思わせてしまうからです。動物をこのように扱うことを通して子供たちに伝えるメッセージや価値観は、暴力のない、思いやりある社会を形成する為に大切なものであるとは思えません。

 私達の暮らす社会には暴力が存在し、思いやりに欠けるところもあります。この現状をよりよいものに変える、子供たちに思いやりというものを教えるために、生命科学をどのように活用するかはとても重要です。アメリカでは、こういうことわざがあります。「ケムシを踏んではいけないと子どもに教えることは、ケムシにとってだけでなく、子どもにとっても大切なことだ」。

(終わり)

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HSUS(米国人道協会)
http://www.hsus.org/

NORINA 
http://oslovet.veths.no/
NORINA/

AVAR(動物の権利のための獣医師会)
http://avar.org/

AVARについてはこちらもご参考ください。

 
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