動物実験廃止・全国ネットワーク   資料請求   サイトマップ   MAIL
AVA-net English Site
まず知ることから
動物実験Q&A
情報公開
こんな実験は必要?
法律・指針等
代替法
海外ニュース
活動の紹介
アピール
レポート
全国ネット活動
ライフスタイル
入会のご案内
本の紹介
ご意見
リンク
HOME
実験犬


 

携帯サイトはこちら

更新履歴
イベント案内
パネル展・勉強会などのご案内は、姉妹団体ALIVEのブログのイベントカテゴリをご覧ください。
 
資料請求
会の案内資料をお送りいたします。
ご入会について
お問い合わせ
検索

 

   

 
 HOME > 代替法 > 人道的代替法によるより良い科学教育(1)  
 

動物実験に代わる方法を考える

人道的代替法によるより良い科学教育(1)

Dr.J.Balcombe
The Humane Society of the United States

2001年1月17日 第14回日本動物実験代替法学会でのバルコム博士の講演
市民公開フォーラム「初等・中等教育における動物実験とその代替法」

(同学会の許可を得て翻訳したものを「AVA-net News」 No.84に掲載)
翻訳:宮路正子


●教育の意味

 まず、このフォーラムのトピックである「教育」が非常に大切なものだということを申し上げると共に、このフォーラムをプログラムに組み入れて下さったことに対して、日本動物実験代替法学会にお礼を申し上げます。

 私達が教育を受けるのは、大きく分けて4つのこと、事実、概念、技術、倫理的価値を学ぶためです。今日、お話することはこの4つすべてに関連していますが、特に最後の倫理的価値に重点を置いてお話したいと思います。なぜかというと、学校では、事実や概念や技術だけでなく、どのようにして良き市民となるか、ということも学ぶからです。生物の授業を受けるのは、身体やその機能について、進化の過程についてだけを学ぶためだけではありません。授業を通して、良い人間になるすべも学ぶのです。ですから、科学教育は倫理的価値についても教える責任があります。この倫理的価値とは、他者を尊重するというようなことですが、これはもちろん動物との関わり方においても非常に大切なことです。

 この講演では、日本の方があまり知らない、北アメリカやヨーロッパでの教育の場における動物の使用についてお話 いたします。また、これらの国での動物の使用に代る方法ー代替法ーについてもお話し、代替法を取り入れることが、より良い教育につながるということを納得していただければと思います。

 今日は、私がこの問題について最近書いた本の内容すべてはお話しませんが、話の中で少し触れたいと思います。この本は米国人道協会(HSUS)のホームページからでも読むことができます。

●死体解剖と生体解剖の違い

 はじめに、死体解剖(dissection)と生体解剖(vivisection)の違いを明確にしておきたいと思います。何人かの日本の方とお話をしましたが、この2つの言葉の違いについてあまりきちんと理解されていないようですので、それが正確に何を意味するのか承知しておいていただきたいと思います。死体解剖とは、すでに生命のない動物を解剖することであり、それに対して、生体解剖とは、まだ生きている動物を解剖に使用することです。また、ここでは、学校での使用ということで、研究施設でのことではありません。

 ここで重要なのは、研究施設での解剖が科学的知識を向上させるという可能性があるのとは異なり、教室での解剖は、生徒が実際に体験できるよう以前行われたことを繰り返しているにすぎない、ということです。

 HSUS(米国人道協会)は教室での生体解剖には反対しています。死体解剖についても基本的に反対ですが、これは動物を解剖するという行為そのものに対してではなく、アメリカでは解剖実習が動物を傷つけることと結びついているからです。解剖に使用される動物は、わざわざ解剖用に殺されるのです。

 実は、北アメリカとヨーロッパでは死体解剖のための動物使用状況に、かなりの差があります。アメリカの学校では死体解剖は珍しくなく、高校を卒業するまでに4分の3の生徒が少なくとも1回は死体解剖を行ないます。動物の種類別では、脊椎動物ではカエルがよく使用され、高校だけで概算で年間300万匹ものカエルが死体解剖に使用されています。他に、屠殺場で殺された妊娠中の雌ブタから摘出したブタの胎児やネコもよく使用され、アメリカの学校では概算で年間10万匹ほどのネコが使用されています。その他にも、イヌ、サカナ、サメ、サンショウウオ、ヘビ、コウモリ、また、無脊椎動物では、ミミズ、ハマグリ、ザリガニなどが使用されています。

●動物の入手方法が問題

 HSUSが学校での死体解剖に反対する理由は、これらの動物の入手方法のためです。大部分は野生から捕獲されており、カエルなども野生のものを捕まえてくるのです。ご存知かもしれませんが、カエルの生息数は世界中で危機的に減少しており、これにはいくつかの理由がありますが、死体解剖用に年間何百万匹も捕獲することもその一因です。他の動物の入手方法は様々ですが、ネコについては、ネコを供給する業者がいます。このような業者は生体供給業者と呼ばれ、彼らは業務に関する情報を公開しないので、HSUSのような団体が自分で情報収集をしなければなりません。調査の結果、このような業者から解剖用に供給される動物が肉体的、精神的に多大な苦痛やストレスに晒されていることがわかりました。

 ある団体がメキシコでネコの供給業者に関する調査を行なったところ、ネコは街頭などで捕獲されてからその業者のところに集められていましたが、その多くは以前人に飼われていたコンパニオン動物でした。捕獲されたネコは溺死、あるいはのどをかき切られて殺されます。こういった行為が見つかっても、業者は衛生法違反で軽い処分を受けるだけで、動物虐待の罪には問われません。ほとんどの教師や生徒はこのような事実をまったく知りません。彼らは毎年、生物供給業者に動物を注文するだけなのですから。

●解剖実習を廃止した国々

 ヨーロッパでは、学校での死体解剖はアメリカほど行われていません。実際、大学より下のレベルでは死体解剖を廃止してしまった国もあります。スイスやドイツがそうです。一般市民の反対によって、学校での死体解剖が法律で禁止となったのです。確か、スウェーデンでも間もなくそうなるはずです。

 ヨーロッパ以外の国では、アルゼンチンで1987年に学校での死体解剖が禁止になりました。子どもの倫理的価値に悪影響を与えるというのが理由です。イスラエルでも昨年末に禁止になりました。また、インドでは、国の法律によって生徒は死体解剖を行なわない選択をすることができます。アメリカでは、50州中8つの州に、いわゆる「死体解剖選択法」(Dissection Choice Law)があり、生徒は代替法を選ぶことができます。そして、教師は生徒がそういう選択をできることを知らせる義務があります。今述べた法律はすべてこの15年の間にできたものです。全体的に、少なくとも西洋では、変化が起こっているのです。

●動物を傷つけない教育を

 HSUSは教育の場において動物を使用することに反対しているわけではありません。教育の場においては動物との接触が必要不可欠であると考えます。生徒は他の生命体と触れ合うことで、その複雑さ、それぞれの異なる個性、進化の様々な側面などについてきちんと知る必要があります。HSUSが反対しているのは、その過程で動物を傷つけることです。私達は、教育のために動物が命を奪われたり、苦しめられたり、ストレスや痛みに晒されるのは正しいことだとは思っていません。ここで、倫理に基づく選択について述べたいと思います。

 共に効果のある2つの方法のうち、ひとつを選択するとします。選択1は肉体的、精神的な痛みや苦痛を伴うもので、選択2はこういったものを伴いません。倫理的に正しい行動をとりたいのであれば、選択2を選ぶべきです。生命科学教育において、私達はこのような選択が可能なのです。私達は動物の命を奪う、という選択をすることもできます。生徒が生物学、解剖学、生理学を学べるように、動物を自然の生息地から引き離し、小さなケージに押し込め、ガス殺、溺死、あるいはのどをかき切るなどの非人道的な方法で殺すのです。あるいは、もうひとつの選択、代替法と呼ばれるものを選ぶこともできます。こちらは肉体的、精神的な苦痛や痛みを伴わない選択です。このような選択ができるのですから、生命科学教育のために、現在ひんぱんに行われているように、動物を犠牲にするべきではありません。

●動物実験に代わる方法

 それでは、代替法についてもう少し詳しくお話しましょう。代替法とは何でしょう。どういうことをするのでしょう。どのくらい種類があるのでしょうか。代替法にはコンピューターを使用した学習法、CD-ROM、インターアクティブ(相互作用)・ビデオ・ディスク、フロッピー、その他のシミュレーション、また、3Dの模型などもあります。模型はカエル、ネコ、サメなど、何種類もあります。ビデオも優れた代替法教材ですし、その他にも図表などいろいろなものがあります。

 代替法は実際に動物の死体解剖を行なうのと同じ体験を提供するものではありません。それとは少し異なる教育手段です。これは、代替法のほうが劣るということでなく、また必ずしも優れているという意味でもありません。

 アメリカとヨーロッパの学校で、代替法はどの程度取り入れられているのでしょうか。私はヨーロッパよりアメリカの事情のほうが詳しいのですが、アメリカではまだほとんどの先生が実際に死体解剖を行なう方を好みます。しかし、代替法を取り入れる学校の数は増えています。これには、いくつかの理由があり、ひとつは先ほどお話した「代替法選択法」です。この法のある州が増え、生徒が選択できるようになったので、学校は代替法の教材を準備しておかなければならなくなったのです。

 ヨーロッパの学校で代替法がどの程度取り入れられているのかはよく分かりませんが、HSUSでは「人道的教材貸し出しプログラム(Humane Education Loan Program、HELP)と呼ばれる特別プログラムを提供しています。教師や生徒に代替法を実際に使用しながら慣れてもらうためのプログラムで、最新の代替法教材を揃え、無料で貸し出しを行なっています。

 インターネットでアクセスできるデータベースもあり、NORINA(the Norwegian Inventory of Audiovisuals)というサイトには5000もの教育用代替法が登録されていますし、動物の権利のための獣医師会(Association of Veterinarians for Animal Rights:AVAR)のサイトでも何千という代替法をチェックすることができます。

(続く)

もどる

 

 

 

HSUS(米国人道協会)
http://www.hsus.org/

NORINA 
http://oslovet.veths.no/
NORINA/

AVAR(動物の権利のための獣医師会)
http://avar.org/

AVARについてはこちらもご参考ください。

 
動物実験Q&A  情報公開  こんな実験は必要?  法律・指針等  代替法  海外ニュース 

 アピール  レポート  全国ネット活動  ライフスタイル

Site Map  資料請求  AVA-netのご案内  資料集・ビデオ  ご意見  リンク  HOME
Copyright (C) 2000-2008 AVA-net All Rights Reserved